AI時代における顧客創造を実現するライター広報
(ライターおよびライター依頼者向け記事)
ピーター・ドラッカーの著書『マネジメント』は、経営者およびビジネスパーソンのバイブルであることは、今も昔も変わりません。企業の目的を「顧客の創造」と定義づけていることは余りにも有名です。これは企業のみならず、個人事業主でもあるライターにも言えます。ライター業の目的は「読者に良い文章を提供する」「取材・執筆活動を通じて社会に貢献する」など理念になりがちですが、これらはニーズを満たすためのプロセスや成果であって、ビジネスの存続なしに実現できません。すべての企業および自営業者の目的は顧客の創造という原理原則で、AIが台頭しようが変わりません。
仕事を依頼してくれる業者や担当者、すなわちクライアントを創造することがライターの目的になります。そのためにクライアントのニーズに応えることは欠かせません。ニーズに応え続けることで、クライアントとの継続的な取引が実現でき、そんなクライアントを増やしていくことでライターとして生きていく筋道が整います。利益を上げることは目的ではなく目的(顧客創造)を果たすための必要条件となります。
顧客を創造するために自分の存在を知らせる広報活動は欠かせません。広報活動と言えば、いかに自分を売り込んで発注してもらうか、呼び水となるような魅力的な表現や切り口に終始してしまいがちです。もちろんそれも大切ですが、そればかりに気を取られると本質を見失い、価値を下げる結果になります。
広報(パブリックリレーションズ)の第一人者とも言える、井之上喬氏は広報を成功に導く要素として「倫理観」「双方向性コミュニケーション」「自己修正」の三つを掲げています。このことからも広報とは、売り込むというよりステークホルダーとの関係構築に重点をおいた情報発信活動で、その主体(組織および個人)の姿勢を示し、仕事を通じて社会的な地位を築くための戦略的活動ととらえることができます。
ライターがAIに取って代わると叫ばれる現在だからこそ「広報」の概念を理解して実践することが重要なのです。

編集者・広告Dのゴーストライターになる意識
有名人の代わりに書籍を執筆するライターをゴーストライターと呼びますが、編集者や広告ディレクターから依頼を受け、細かな指示のもと取材・執筆する行為は、まさに依頼者(編集者や広告ディレクター)のゴーストライターとも言えます。有名人の書籍も厳密に言えば、執筆に関する指示をライターにするのは編集者であって、有名人はいわば執筆対象ととらえるのが自然です。
執筆内容およびそのねらいは、コンテンツ制作を仕切る編集者やディレクターの頭の中にあって、ライターは彼ら依頼者の意向に沿って取材し原稿を完成させます。依頼者の思いや意図に沿った記事を完成させる、依頼者のゴーストライターと言っても過言ではありません。このことから依頼者の手となり足となる姿勢が求められ、それを無視して、その枠を外れた執筆や対応をすると敬遠され顧客創造のチャンスを逃すことになります。
依頼者と言っても十人十色。仕事に対する熱量、ディレクターとしての力量、ライターへの依存度はさまざまです。ライターは、これら依頼者の特徴をつかみ、依頼者の好む仕事対応・成果物(執筆した原稿)を納品することで、「このライターとは仕事がしやすい」「取材対応も原稿も良い」と好印象を抱いてもらい、結果次の受注機会を得られます。
ここで大事なのは、「仕事のしやすさ」「原稿の良さ」は依頼者によってまちまちだということです。依頼者Aが感じる良さと依頼者Bが感じる良さは、必ずしも一致しないので、相手の特徴を瞬時に見極め、その依頼者の好みの仕事スタイルに合わせることが成功のカギです。誰に対しても分け隔てなく接する姿勢は、偉人や指導者の特長として語られがちですがライターのみならず現場での仕事対応においては臨機応変さが求められます。
依頼者の懸念点を考慮しての広報
これまで依頼者との向き合い方をお話ししてきましたが、それ以前に自分の存在を知ってもらい興味を持ってもらわないことには何も始まりません。ライター案件を持っていそうな広告関連会社に電話やメールで営業をしたり、ライターを探している人がアクセスできるHPやブログ、SNSの開設は欠かせません。
私の見解になりますが、多くの依頼者が共通して初めてやり取りするライターに対して気にとめる事柄があります。「ちゃんとした取材ができ、こちらが求める原稿を納品してくれるだろうか?」「一所懸命に対応してくれるだろうか?(手抜き仕事はしないだろうか?)」「情報漏えいはしないだろうか?」これらが確認できなければ、正直仕事を依頼するのに躊躇します。逆にこの三つが確認できれば安心して依頼できます。それを補完するのが以下に述べる行動です。
HPやブログで具体的な媒体の実績をでかでかと掲載していたり、SNSで企業名を出していたりすると守秘義務の観念がゆるい人だと依頼対象から外れます。また自分を大きく見せようとする書き方は、見る人が見ればすぐに分かり、発信者の意図とは逆に頼りなさを印象づけます。それは面談にも言えます。私個人的には、控えめなほうが好感を抱きます。実績は淡々と、自分の仕事スタイルや考え方は理路整然と述べるのが良いのではないでしょうか。人柄は意識して出すものではなく、自然とにじみ出るものです。
依頼者のほうからアプローチしてきて面談することになったとします。メールのやり取りは重要で、相手にそのつもりはなくともライターとしての姿勢を推し量られています。レスポンスの早さ、的確なメール内容からそのライターがどんなやり取りをするか依頼者は想像します。「とてもきっちりしていて好感を持てるなあ」と思ってくれることもあれば、「仕事が雑そう」「淡泊な原稿が上がって来そう」「自分本位でこちらの指示を聞いてくれなさそう」と判断されることがあるので、相手目線に立ったメール対応が大切です。
社会に役立っていることをイメージする
料理は愛情と言いますが、単に愛情を込めたからといって料理が美味しくなるわけではありません。食する人に「美味しく頂いてもらいたい」と思えば調理や食材選びに手間ひまをかけ料理研究もし、結果美味しくなるという道理です。仕事も同様です。
効率が優先され評価されるAI時代にあって、ビジネス現場での「愛情」は時代錯誤ともとらえられかねませんが、私は逆にそんな時代だからこそ「愛情」をもって仕事をすることに意義を見い出します。大事なのは、その意味合いのとらえ方です。
顧客を創造するために、依頼者(=顧客)に寄り添い、依頼者のニーズを満たすことに一所懸命になって取材や執筆をするのです。そうすると本質的なことが見えて、軸のある原稿が書け、依頼者に喜ばれそれが自身の活力となります。ライターとして仕事ができていることに感謝し、その仕事を通じて依頼者のみならず社会に役立っていることを想像し、意識して心底実感することで仕事が自分にとってかけがえのないものとなり、仕事に対する愛情のループが巻き起こります。
先述した広報を成功に導く3要素「倫理観」「双方向性コミュニケーション」「自己修正」は、情報発信にとどまらず、行動指針であり姿勢です。決して依頼者にこびることを強要しているわけではありません。倫理に反する要望は倫理観をもって対応すべきで、それに反して顧客創造ができたとしても「社会に役立っている」実感は味わえません。
この「社会に役立っている」という感覚は、依頼者にも伝播し、相手とのより良い関係のみならず依頼者の社会性にも良い影響を与える可能性があります。そうなれば便利だから、安価だからという理由でAIを選ぶよりも、純粋にこのライターと仕事をしたいという心理が働き、ライターの顧客創造を後押ししてくれるでしょう。
【関連ブログ】
依頼者がライターに期待する本当のこと
https://www.writer.co.jp/hontou/
生成AI普及で浮き彫りになったライターの役割
https://www.writer.co.jp/writer_duties/
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