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ライターに勝機。AIは読者に共感できない

(ライター依頼者およびライター向け記事)

私はライターとして、ライターをコーディネートする会社の代表として、生成AIの有効性を認めつつも同時に仕事を奪われることの恐怖に怯えています。生成AIがライターという職業をこの世から消し去るとは思っていませんが、これまでライターに依頼していたライティング業務を生成AIが代替することで「ライター市場」が縮小するだろうことは、容易に推測できます。小さなパイを取り合う市場に明るい未来はありません。

「生成AIが仕事を奪う」「生成AIがライティング業務を代替する」と、生成AIが主語になりがちですが、厳密には「生成AIを使う人(広告ディレクターやビジネスパーソン等)」が主語で、生成AIみずからが自主的に行動するわけではなく、主語である人の補助をするツールに過ぎません。ライターのライバルは、「生成AIを使う人」です。ライターとしての経験や技術や感性がなくとも、生成AIを使えばライターを凌駕する記事やコピーを書けると考える人たち、さらに言えばそんな人たちの意識こそがライターから仕事を奪うのです。

生成AIと人間とでは、思考の仕組みが違う

2022年11月に登場したChatGPTの文章生成能力は衝撃でした。生成AIの急速な進化は、突然まったく新しい技術が生まれたというより、それまでの技術の延長線上で起こりました。膨大な情報を学習させ、言葉同士の関係性を処理する仕組みを巨大化していった結果、ある段階で臨界点を超えたように性能が飛躍的に向上し、現在も進化を続けています。神秘的な人間の意識や思考とはまったく違う、どちらかというと単純な仕組みで成り立っているものの情報処理や知識量では、どうあがいても人間はAIに太刀打ちできません。

仮にAIが人間と同じような思考の仕組みを持つのであれば、人間の喜怒哀楽や考え方を今より深く理解できるはずです。人のように喜怒哀楽を示すAIに対して、共感してもらっていると感じるのは私たち人間の一方的な思い込み、錯覚でしかありません。

気持ちが通じる唯一無二の親友としてAIに接している人に対しては幻滅させる内容かも知れませんが、私たちライターにとって、この事実は朗報です。いくらもっともらしい秀逸な文章を書いたからと言っても、AIには私たちが文章を生み出す際に心から湧き出る感覚そのものが存在しません。

「秀逸な文章を生成してくれるなら、それを生み出す仕組みなど関係ない」と私も当然そう感じていた時期がありました。しかしこの人間とは異質の「思考の仕組み」こそが生成AIの記事作成における致命的な欠点であり、私たちライターにとって唯一の勝機であることを知る出来事が先日ありました。

AIが気づきにくい「読者の分からない」

私は、ライターが書いた原稿をチェックすることもあります。チェックする際のポイントは、前知識の持たない読者がその記事を読んで理解できるか、イメージできるか。それを主眼に置いて原稿チェックをします。すると言葉足らずな表現や、情報の飛躍を見つけることができます。知識のある人には問題なく理解できるのですが、知識の無い人には内容が理解できなかったり、誤った解釈をしたり、意図が分からなかったりして情報伝達としての役割を果たしません。ライターは事前に情報収集し取材に挑み、取材対象者とやり取りしながら自分の知識にしていくので「にわか専門家」になりがちで、言葉足らずや情報の飛躍に陥りやすいのです。もちろん優秀なライターはそれを見越して原稿を仕上げます。

例えば、本文中の主語や目的語、場所や位置などの情報を省くケース。そのテーマや状況を知識として持っている人には難なく理解できるのですが、知識が無い人にとっては状況がつかめません。先日、そのような原稿チェック(添削)をした後に、元原稿(チェック前の原稿)をAIに示したところ、元原稿を妥当な文章表現と判断しました。生成AIの仕組み上、文章として情報として過不足なく、かつ文法上正しい日本語として成立していれば問題ないと判断するのです。理解力が高いからこそ、理解できない人の視点に気づかないのかもしれません。

決して私の原稿チェックが優れているとか、正しいとか言いたいわけではありません。私は人間(ホモ・サピエンス)であり、記事を読む人間と生物学上同じ仕組みで思考しているので、知識のない読者の思考を想像することができ、修正すべきところが分かります。しかし生成AIの思考(データ処理)は私たち人間と仕組みが違います。だから「読者が分からないところ」が分からない。「読者の分からない」に共感できなくて当然なのです。

ライティング業務はライターがする

人間はみんな同じ仕組みで思考をしているので誰でも共感できる、だから誰でも原稿チェックできるという考えにはなりません。人間には得手不得手がありますし、経験量によって精度が向上することもあります。

これまでライターに依頼していたディレクターが、会社の方針だからとライター依頼をやめてディレクター自らがにわかに生成AIを使ってライティングしたとします。戦略に則した過不足のない情報と展開、日本語として正しくまとまりある記事に仕上げ、ディレクター自身もそれに満足しているとします。しかし優秀なライターからすれば、それは読者の共感を得られない展開・表現になっていて、“マズイ記事”かもしれません。

生成AIは、それらしい文章を書きますが、人間と同じような思考プロセスを経ていません。AIと人間との文章作成における思考のギャップを理解せずに、AIが生成した記事やコピーを鵜呑みにして量産していけば、何とも言えない違和感のある文章があふれる世の中になるでしょう。それが健全だとは思えません。その違和感を無くす一番の手立ては、AIを使う・使わないに関係なくライティングに精通した人がライティング業務をこなすことだと私は考えます。

【関連ブログ】
AI時代に選ばれるライターの条件
https://www.writer.co.jp/requirements/

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