toggle
ライターと依頼主の最適なマッチング、それがコンテンツを特別なものにする鍵です。案件特性を考慮の上、最も相応しいライターを選抜・手配し、納品までワンストップでお手伝いします。

ライターがAIに仕事を奪われるなんて時期尚早

今から5年前、AI(人工知能)の進化がめざましく単純作業のみならずクリエイティブな仕事もコンピュータに奪われると多くのメディアが危機的に報じ話題になりました。ライターも例外ではないと考えた私は、能力向上に努めながら業界を俯瞰して希望の光を見つけることが大切と、尤もらしい内容を当ブログに記しました(下部にリンクあり)。しかし、この場を借りてその考えを撤回します。

ライターがAIに取って代わられることは、今のところないと考えます。そんな考えに至ったのは、ある方のYouTube動画を見てからです。

夜眠れないとき、眠りに導いてくれるような動画を探して、音声だけ聞き流しながら眠りにつくことがあります。その夜は落語とか朗読とかいくつか試したのですが、声のトーンや話し方のリズムがその時の自分に合わず十秒ほど聞いては次々と別のものを当たっていました。

適当なものがなく方向性を変えて宇宙や生物の進化など科学モノを探していたところ「時間は脳の中にしか存在しない」という興味深い見出しが目に入りました。再生回数は決して多いとはいえず、タイトル画像の人物も軽そうな感じで、正直期待はしなかったのですが再生してみると、とても深くややこしい内容を非常に理解しやすく説明してくれていて、話のテンポも軽快で思わずそのユーチューバ―の動画を立て続けに見ているうちにどんどん目と頭が冴えていきました。言うまでもなく睡眠不足で次の朝を迎えました。

神戸に関西版ユヴァル・ノア・ハラル現る!?

そのユーチューバ―とは、株式会社ロボマインド(神戸市)の代表取締役である田方篤志(たかた あつし)さんという方で、心を持ったロボットを開発(=ロボマインド・プロジェクト)すべく日々研究されています。と言っても田方さんは技術者でも学者でもありません。物理学や脳科学、意識科学、コンピュータサイエンスなど大変豊かな知識をフル活用して、独自の理論を提唱するプランナー的存在です。まるでベストセラー『サピエンス全史』の著者ユヴァル・ノア・ハラル氏を彷彿とさせる多分野・多観点からのアプローチに加え、関西弁で面白おかしく雄弁に語る講義動画は、まさに“田方劇場”です。

田方さんの講義は、目からウロコが落ちるような感覚の連続です(筆者の個人的主観ですが)。AIと言えば、日進月歩で暮らしを便利にするといったイメージがあるいっぽうで多くの仕事を人々から奪う疎ましい一面も持ち合わせています。しかしクリエイティブな仕事がAIに奪われると心配するのは時期尚早だと、田方さんの動画を見て考えが変わりました。というか現実を知りました。

いくら情報を蓄積してもAIに人間らしい会話はできない

AIコミュニケーションロボットの受け答えはビッグデータを駆使してディープラーニング(深層学習)させたもので、AIには人間でいう心や意識といった核となるものがそもそも存在しません。膨大な情報から傾向をつかんだり、最適なモノなどを選び出したり、文法的にも情報的にも正確な文章を作成したりすることはできても、何気ない会話のやり取りができません。AIの会話は予定調和で、話しかける際、私たちはロボット前提に単純なやり取りしかしないのではないでしょうか? 

会話が弾まない人、不自然な受け答えをする人、雑談をせず通り一辺倒な話し方をする人を「ロボットみたいな人」と揶揄するでしょ? ロボットは人間とは明らかに異なり、人間的な言動をしないので、私たちとの心の距離は埋まりません。例えばAIロボットは「共感」という単語をビッグデータから引き出し、「共感」という単語を使って美辞麗句を連ねることはできますが、「共感」という言葉の意味やイメージを持っている訳ではありません。

私は20代の時、松竹本社(東京東銀座)内にあった松竹シナリオ研究所という脚本家(シナリオライター)を育成するところでシナリオの基礎を学びました。シナリオは小説以上に人間(らしさ)を描くことが求められます。「人間を描く」一見簡単そうに思いますが、これからシナリオの基礎を学ぼうとする若者には中々難解でした。

ある若手脚本家が講師を務める授業で、こんな問いが私たち生徒に投げかけられました。仲のいい結婚7年目の夫婦。幼稚園に通う子どもが1人いる設定。ある日、夫が会社から帰宅して、夕食の用意をしている妻に向かって「俺、好きな人ができたんだ」と唐突に打ち明ける。夫に対して発する妻のセリフ(およびト書き)を考えるという問いでした。

生徒の多くは、「私(妻)は、あなた(夫)のために毎日子育て、家事を頑張っているのに…」や「どうして? 私に魅力がなくなっちゃった?」と夫の心が離れたことに対して抱く感情であったり、「それじゃ、私も男を作るから」や「好きな人ができて良かったわね」と感情の裏返しを示すセリフであったりしました。この問いに正解はありませんが、列挙したこれらのセリフは、予期せぬことを言われた人が一言目に発するセリフとしては不自然に感じます。

ちなみに講師が用意してきた模範解答はこうでした。

夫「俺、好きな人ができたんだ」

 妻、食事の準備をする手が止まり、一瞬夫をにらみ視線を外す。

妻「あっそう……でっ、ご飯はどうするの?」

講師が用意した妻のセリフは、とてもリアリティがあって心の動きが垣間見られてその場の緊張感が伝わって来ます。それに対して生徒たちが考えたセリフは、まるでロボットが話すセリフみたいです。もし自分の半生が映画化されることになり、脚本家をこの講師と生徒たちから選ぶとしたら、誰に脚本を書いてもらいたいですか? もちろん講師ですよね。これがライターの仕事がAIに奪われることはないと言い切れる理由です。相手が放つ言葉を頼りにビッグデータから最適な言葉を選び出す仕組みのAIには講師が用意したようなセリフは絶対に出て来ません。

AIがライターの仕事を奪うのは、心の仕組みがアルゴリズム化されたとき

心の琴線に触れる記事やコピーって、聞き手(筆者)や話し手(取材対象者)の人間性が出ていて、それに読者が共感することだと思うのですが、しかしAIにはそれを判断する心のような核がないので、「人を共感させる」という観点からのアプローチは望めません。私たち人間が普遍的に共有している「心」または「感情」という実体のつかめないものをAIに組み込むことは不可能と考えられているからです。そんな不可能といわれる心の仕組みを解明して、アルゴリズム化しAIに組み込み、心のあるロボットを開発しようとしているのが、田方さんが推し進めているロボマインド・プロジェクトです。実現できれば、それこそノーベル賞ものです。

ビッグデータを駆使して古今東西の名作を模倣や“いいとこ取り”して、AIが物語を完成させるのを何年も前にテレビで見た記憶がありますが、AIが文学賞や広告賞を取ったというニュースを聞いたことがありません。情報をまとめたり、リサーチしたりするライター業務の一部をAIが担っているところはすでにあるかも知れませんが、それは産業革命や高度経済成長期に単純作業を人の手から機械化したのと同じで、今に始まったことではありません。心を持ったAIロボットが開発されない限り、ライターをはじめとする感性を伴う職種は無くならないと考えます。

最後に、興味深い動画をアップしていただいた田方さんに御礼を申し上げるとともに、ライター手配で生計を立てている者としては矛盾しますが、ロボマインド・プロジェクトの成功、ノーベル賞受賞をお祈り申し上げます。

【関連ブログ】
10年後もライターでいるために
https://www.writer.co.jp/10年後もライターでいるために/

AIに意識を発生させるロボマインド・プロジェクト
https://www.youtube.com/c/ROBOmindProject/featured

****************************************************

ライター手配のライトスタッフ

◆オフィシャルサイト:https://www.writer.co.jp/

◆ライターとの出会いをサポート:https://www.writer.gr.jp/

◆電話でのお問い合わせ:06-6364-5657

◆メールでのお問い合わせ:https://www.writer.co.jp/inquiry/

◆住所:〒530-0055 大阪府大阪市北区野崎町1-25新大和ビル207

****************************************************

関連記事